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「3軸合成値」について

2009年11月 エクセン株式会社 技術部


厚労省より通達された「基発0710」:2009/7/10で、振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針が示され、これにより振動障害防止に係る測定/評価/管理方法が明確化されました。その基本となる数値が「3軸合成値」というもので、正式名称は「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」(本文では「3軸合成値」と記載します)と言います。1軸のみでなく3軸合成値を評価基準としたところが今回の基発の重要ポイントです。以下コンクリートバイブレータに係る測定方法/評価方法/管理方法などついて説明しますので、関係者は理解を深めて下さい。

1)「3軸合成値」とはどんなもの?

3ziku_g1.gif
手腕にどれだけの振動が伝わるかを推し量るための基になる数値で、発生している振動をX/Y/Z の3方向(3軸)の成分に分けて測定し、周波数別に手腕に伝わる係数を乗じた値(実効値)を合成したものです。JIS B7761-1準拠の測定器を使用し、JIS B7761-2に基づく方法で測定した値で、この数値が大きいほど手腕に伝わる振動は大きいと言えます。3軸毎に測定した場合は下式で求められます。
3ziku_su1.gif
a:周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値(m/s2)・・・注1
ax,ay,az:3軸それぞれの周波数補正振動加速度実効値(m/s2)

注1:JISおよび基発の記号はhv(ハンドル部振動)ですが同じ意味のものです。

2)「3軸合成値」をどう扱うの?

[1] この値を基にバイブレータの一日当り使用可能時間(振動暴露限界時間)を求めます。
[2] 求められた使用可能時間(振動暴露限界時間)に基づき作業計画を作成します。
[3] 作業計画書を作業者に示して作業に当らせます。
事業者(施工者、現場監督者)は以上の手順を踏んで、労働者に対する振動暴露時間の管理を行い、振動障害防止を推進しなければなりません。

3)「3軸合成値」から使用可能時間を求める方法

使用可能時間の算出に当っては、まず日振動暴露量A(8)(後述)という値を求める事になっていますが、「基発0710」第2号では「3軸合成値」と使用可能時間(振動暴露限界時間)の関係式が示されており、この式より簡単に求める事ができます。尚、この値が2時間を超える場合には、特例(基発0710第2号3(2)ウ項)を除き使用可能時間(1日の振動暴露時間)を2時間以下にする事と定められています。

su_1.gif
・・・・・式A
TL:振動暴露限界時間(hour)

4)日振動暴露量A(8)とは

1日8時間の労働時間中に手腕が振動が暴露される合計時間の事を日振動暴露量A(8)と言います。振動工具によって1日当りの使用時間(振動暴露時間)が異なりますので、単に「3軸合成値」の大小のみで振動障害への影響度を推し量る事が出来ない場合があります。1日当りの使用時間が把握出来ている場合には、この日振動暴露量A(8)値を算出して管理を行うと便利です。

5)日振動暴露量A(8)での管理方法


[1] A(8)値の計算

3ziku_su2.gif


・・・・・式B
 

A(8):日振動暴露量(m/s2
T:1日の振動暴露時間(hour)

[2] A(8)値の評価
詳細は基発0710第2号3(2)項によりA(8)の値に応じて対応が定められています。
2.5m/s2を日振動暴露対策値、5m/s2を日振動暴露限界値と言い、対策の大枠は以下の通りです。

2.5m/s2以下:特に対策は求められないが、特例を除き当面2時間以内の使用に制限する。
5m/s2≧A(8)>2.5m/s2:使用時間の抑制、低振動の振動工具の選定に努める。
5m/s2超え:5m/s2を超えることが無い様に対策を行う。

A(8)値が5m/s2(日振動暴露限界値)を超える場合の具体的対策としては下記が考えられます。
・振動暴露時間が短くなるよう作業計画を見直す。
・複数の作業員が交代制で作業する。

これら事から事業者は「3軸合成値」が小さい値の機械を選定するケースが増える事になりますので、メーカーとしては機器の低振動化を推進しなければなりません。

6)実際の評価方法

現実的な想定での評価方法について説明します。
[1]HBM40AXSを使用したいが何時間まで使用可能か?
  HBM40AXSの「3軸合成値」を確認する。・・・<別表1>
          ↓
        3.4m/s2
          ↓
前出の式AでTLを算出する。
       su_2.gif
          ↓
       TL=17.3時間
          ↓
2時間を超える数値となりましたが、基発0710第2号3(2)ウ項で「これが2時間を超える場合には、当面、1日の振動暴露時間を2時間以下とすること」とあるので、この指針に従い最大2時間と決定します。

[2] E38FPで一日4時間使用を想定しているが問題はないか?
上記、基発0710第2号3(2)ウ項で「これが2時間を超える場合には、当面、1日の振動暴露時間を2時間以下とすること」の指針から、特例を除き1日2時間までと使用を制限されていますので、そもそも一人の作業者で4時間を計画する事は出来ません。よって何人の作業者が必要かという視点で評価します。

 E38FPの「3軸合成値」を確認する。・・・<別表1>
          ↓
        9.0m/s2
          ↓
   前出の式BでA(8)を算出する。
      3ziku_su4.gif
   A(8)=6.36m/s2・・・・・・NG
          ↓
日振動暴露限界値5m/s2を超えているので対策を講じる必要がある。
          ↓
一人4時間の作業ではなく、一人2時間×二人の作業で検討する。・・・(対策1)
          ↓
       A(8)の再計算。
      3ziku_su4.gif           ↓
       A(8)=4.50m/s2・・・・・・OK
          ↓
日振動暴露限界値5m/s2を下回ったので、上記(対策1)の作業計画を決定する。


7)管理値の所掌範囲について

管理値である「3軸合成値」と日振動暴露量A(8)について、基発等で所掌範囲が明確に規定されている訳ではありませんが、実務的には以下のように分担されます。
[1] 「3軸合成値」測定/表示=機器製造者
[2] 日振動暴露量A(8)を計算/評価/管理=事業者(現場監督者、施工者)

 

8)「3軸合成値」の表示について

「基発0710」第3号2項で表示内容が示されていますが、現時点弊社では、ご要望のお客様に対し個別に説明書面を提出しています。また、本文書の様な関連情報と共に「3軸合成値」をHP上に随時公開を進め、順次本体および取扱説明書に「3軸合成値」の順次表示する準備を進めています。

 

9)関連資料